形成外科専門医の齋藤隆文といいます、東京で形成外科と美容外科をしています。
これまでの記事では、基本的に両側とも手術をした患者さんを例に眼瞼下垂治療をご説明しました。
しかしながら、もちろん、左右差があったり、片側だけが眼瞼下垂の場合もあります。
この記事では、片側だけ下がっているタイプの眼瞼下垂症について、実際のお写真を見ながら治療の流れをご紹介します。
“片側だけ”の眼瞼下垂症手術
まぶたは左右に一つずつあるので、当然症状の程度に応じて左右差があったり、片側だけが眼瞼下垂の場合があります。ダウンタウンの松本人志さんも、左の眼瞼下垂が進行していて左の眉毛が上がっていますよね。
この場合、
・片側だけの手術は可能なの?
・下がっていない方を手術するのは嫌だ!
・片側だけ手術をして、片側だけがいかにも手術をしたような二重まぶたになるのは避けたい
などなど、疑問やご不安が出てくるかと思います。
ご年齢を重ねておられる方でしたら、すごく重い側のまぶたを改善したいんだけと、反対側も少しだけ重くなってきたので、どちらもバランスよくやって欲しい、というご要望もありますが、、、
若い方でしたら、すっきりと開く側に合わせてもらうだけで形の変化は避けたかったり、よく開いている側の手術をするなんて考えられない、という方もいらっしゃると思います。
さて、上記のような質問に対する答えとしては、
基本的には、片側だけ手術を行うことは可能、です。
ただし、いくつかの、事前に理解しておいた方がいいポイントがあります。
一つ目は“ヘリングの法則”です。これは、
“片側の眼瞼下垂を治療すると、対側のまぶたが下がってしまう”というものです。
“片側だけ”でも眼瞼下垂がある場合、まぶたはその重さに負けないために”両側とも”頑張って、無理やり開こうとしていることがあります。
その場合に片側だけを治療すると、手術側の眼瞼下垂は治るので、両方とも頑張って開く理由がなくなります。見た目上は眼瞼下垂ではなかった対側(手術していない側)も、頑張らないで、開けるのをサボるようになるので、術前より開きが悪くなってしまうことがあるのです。
軽度でも左右差がある全ての人にこの法則が当てはまる可能性があります。
また、これが厄介なのは、手術直後には起こらず、術後しばらくしてからはっきりしてくることもあると言う点です。なので、片側だけをやると左右差が出やすい可能性があります。
これについては、診察時に今までの経過を詳しく聞いたり、いくつかのテストをすることでリスクを予測し、片側だけをするのか、両側ともするのか、を決めていきます。
が、そうは言っても、現時点では100%これを見極めるための確立された方法はないと考えられています。
なので、これらのことを理解した上で、
*片側だけで済む可能性があるなら、たとえヘリングの法則で対側もまぶたが下がり、二度目の手術をすることになっても構わない、できるだけ不要な手術は避けたい、切りたくない。
と考えるか
*二回も手術をするのは嫌なので、両側とも最初から手術する
ことにするのかを主治医と相談するのが大事だと思います。
二つ目は、皮膚のvolume、余りの左右差です。特に、眉毛の位置に左右差があると皮膚のvolume、余りに左右差が出ていることが多いですが、両側とも皮膚が余っている場合には片側だけの手術で左右をきれいに揃えるのは困難を極めます。この点についてもよく相談をする必要があります。
“片側だけ”の眼瞼下垂症手術
この方は、数年前からの片側だけの眼瞼下垂のお悩みで受診されました。
・できるだけ印象を変えたくない
・右だけを手術して左と同じに戻してほしい
というご希望でした。
診察上、左のまぶたのヘリングの法則のリスクは低いと判断しました。また、皮膚の余りも少なく、現時点で皮膚を切除する必要はないと考え、ご希望通り右だけを黒目の幅だけの切開でアプローチし、挙筋前転術で治療しました。
*手術には必ずリスクが伴います。術前に主治医と十分に相談し、納得してから治療を受けるようにしてください。
施術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転 片側のみ
費用:今回のような保険治療の場合 3割負担で約2.5万円
リスク:腫れ、内出血、痛み、違和感、左右差や後戻り、ドライアイ、眼瞼痙攣、霰粒腫、など
聖路加国際病院 形成外科 月曜日・金曜日 初診外来 予約制
加藤クリニック麻布 不定期の木曜日・土曜日 初診外来 予約制