形成外科専門医の齋藤隆文といいます、東京にある聖路加国際病院と加藤クリニック麻布で形成外科と美容外科をしています。
生まれつき、あるいはけがをして鼻が曲がっている、鼻のつまりがひどい、鼻の穴に左右差がある。皆さんの周りにも、そんな方、いらっしゃるのではないしょうか?
これらの症状は、手術による治療で改善できる可能性が高いです。
この記事では、私が専門の一つとしているお鼻(斜鼻、鞍鼻などのお鼻の変形や美容外科目的)の手術治療について、実際のお写真を見ながらその流れをご紹介します。
*この記事で得られること*
☆MRI検査画像を見ることで、お鼻の中がどうなっているかを理解する
☆実際の手術前後の写真で、斜鼻治療による変化を理解する
では、いきましょう!
お鼻の曲がりと空気の通りを同時に改善させる治療
今回取り上げるのは、お鼻の曲がりと空気の通りを同時に改善させる治療です。
こちらのお写真は、お怪我による鼻骨骨折で斜鼻となった患者さんです。
鼻をぶつけたあとから、鼻の通りが悪くなった。でも病院でC Tとったら骨は折れてないって。
じゃあ、なんで鼻詰まってんねん!
こんな患者さん、実は結構いらっしゃいます。
耳鼻科の先生から、多分軟骨の曲がりが原因の、いわゆる斜鼻だねー、とぼくのところに紹介になるケースもあります。
鼻の曲がりには様々な原因があり、専門家の先生にきちんと診断してもらうことが重要です。
軟骨の骨折を疑った時、聖路加国際病院ではM R Iが撮れます。ぼくの先輩の先生方が苦労して、鼻専用のM R I検査を完成させています。先人・先輩はいつでも、偉大です。
あまりにも精密すぎて、この設定で検査ができるのは今のところ当院だけみたいです。
さて、画像検査を施行して、骨はあまり大きな変形がないものの、やはり軟骨性の斜鼻を認めました。こんな感じです。MRI検査では軟骨がどこでどのように曲がっているが一目瞭然です。CT検査では軟骨は描出されないので、貴重な検査だと考えています。
実際に患者さんが当院にいらっしゃった場合は、一緒に画像結果を見ながら、骨、軟骨の曲がっている部分を確認します。特に、どの部分が曲がりの原因になっているかを認識してもらうことで、術後変化やリスクについても正しく理解してもらえると考えています。
ここで一つ大事な話。
WHOが世界の先進諸国の医療状況について評価をまとめたことがあります。
我らが日本は、ほとんどの項目で最高ランクのAを獲得しており、理想的な医療システム、医療のクオリティとして高く評価されています。
そんな日本ですが、唯一最低ランクに評価付けられている項目があります。
それは、”患者の病識、病状理解”です。つまり、日本人は患者さんとして医療にかかる時、自分の病状を正しく理解しないまま治療を受けている、という評価です。
みなさん、自分や周りの人たちに当てはめて一度考えてみてください。
自分の病気について正しく説明できますか?
自分の飲んでいる薬の作用、副作用についてきちんと説明できますか?
自分の今までに受けた手術について正しく伝えることができますか?
医者の考えに任せっきりになるのは、日本の医療が信頼できることの裏返しでもあり、ドクターや医療関係者の日々の努力の賜物なんだろうとは思います。
ただ、治療を受けるのは他の誰でもない”あなた”です。
鼻の手術を例にとって考えてみると、
「鼻の曲がっている原因とか治療法のことはよくわかんないけど、先生はプロなんだから大丈夫でしょ」
と、完全し信頼し切って治療を受けたものの、ひどい合併症が起こり、こんなこと聞いてなかった、と先生に問い詰めるも、
「説明しましたよ」
の一言で片付けられてしまい、それが書かれた同意書を前に何も言えなくなった、
と言って僕のところに相談にいらっしゃる患者さんは少なくありません。
詳しいところは任せるとしても、最低限自分の言葉で説明できるくらいの病状・治療法を理解しておきましょう。
そうすれば、絶対に起こって欲しくないリスクがある治療法は選択しないで済むかもしれません。また、事前に正しく理解しようと努力すれば、少なくともおかしな事を言っている先生に捕まるリスクも減らせると思います。
理解できない説明をする先生はやめておくのが安全です。
さて、鼻の話に戻ります。
こちらの軟骨の変形が原因で鼻詰まりと鼻の曲がりが生じていますので、手術で修正する方針となりました。
通常は、全身麻酔で行います。
オープンアプローチという、鼻の穴の中と、鼻柱(左右の鼻の穴の真ん中にある皮膚の部分)に小さな切開をして行います。
真ん中の曲がった鼻中隔軟骨を曲がっている部分だけ切除して、残した軟骨部分を補強して、まっすぐに鼻筋を治します。
斜鼻治療の詳細な流れについては、以前のポストやブログでも説明しています。参考にしてください。
今回の患者さんについては、術前と術後9ヶ月のお写真を提示しています。
本日のポイント
鼻をぶつけて、曲がってしまった
鼻をぶつけて、骨がまっすぐなのに鼻が詰まっている
鼻が曲がっていて、治したい
鼻が曲がっていて、手術を受けたら見た目や鼻閉がひどくなった
こんな方は、私たちがお力になれるかもしれません。
手術の前に大事にしていること
お顔の左右差、全体のバランスを一緒にお写真で見ながら、患者さんとその方の自覚している”曲がっている”を共有できるように努力しています。曲がりを修正していく中で鼻の高さや長さについてももちろん変化が起きるので、ご自身が認識されているお顔の特徴・コンプレックスを確認して、手術による変化でそれらが悪い方向にいかないかを確認します。こういったことを確認するツールとして強力な武器となるのが、写真を使ったシミュレーションです。写真を手術に沿って修正していきながら、術後の形のイメージを事前に共有しておくことで、患者さんにも手術による変化に対する心の準備をしてもらうようにしています。
治療についてのご相談や受診のお問い合わせについては、当HPメインページに
お問い合わせメールアドレスのリングがございますので、そちらからご連絡ください。
*手術には常にリスクが伴います。術前に主治医から丁寧な説明をしてもらいましょう。
・施術内容:鼻骨変形治癒骨折矯正手術、鼻中隔矯正術
この方は、保険治療として、上記手術を全身麻酔で行いました。
・鼻の手術のリスク
術後出血、感染、傷が開く、曲がりや変形の残存、鼻閉の残存、後戻り、など
・費用
この方は、保険治療で、手術にかかる費用は高額療養費制度の対象となりました。
費用は約5〜26万円が目安となりますが、詳しくは厚生労働省のH Pをご参照ください。これ以外に、入院日数により入院費用がかかることがあります。
聖路加国際病院 形成外科 月曜日・金曜日 初診外来 予約制
加藤クリニック麻布 不定期の木曜日・土曜日 初診外来 予約制